知っ得シリーズ② 「障害年金Q&A」
「知っ得シリーズ」は、会活動や支援体制・仕組みなど、知っているようで知らない色々な事について、リレー形式で掲載します。7月に行われた全国LD親の会オンライン勉強会では、日詰正文先生による「障害年金と障害者手帳について」をテーマに障害年金の基礎知識を学びました。
今回の「知っ得シリーズ」では、障害年金専門 ぽぷりサポート事務所の社会保険労務士 溝上久美子(「おたふく会」代表)が、障害年金請求の際の留意点についての質問にお答えします。
《質問》 障害年金の請求には初診日(障害のもとになった病気や障害で初めて病院にかかった日)が大切だと聞きましたが、初診日にはどのような意味があるのでしょうか?
《回答》 障害年金の請求のために、初診日が大切な理由は、一つは初診日に加入していた年金制度(20歳前と国民年金・厚生年金)によって、受給できる制度に違いがあるためです。国民年金は障害の程度が3級では受給できない、厚生年金は1・2級は2階建ての年金が受給できるなどの制度の違いがあります。
二つ目は、初めて障害年金の請求ができる日(障害認定日といいます)が、初診日が18歳6か月より前であれば20歳到達時(誕生日の前日)ですが、初診日が18歳6か月より後であれば、初診から1年6か月を経過した日になります。初診日が20歳前の場合は、障害認定日の前後3か月以内の診断書が必要ですが、20歳以降場合、障害認定日以降3か月以内の診断書になるなど、請求するときにどの時点の診断書を書いてもらうのかに違いがあります。
三つ目に、20歳以降に初診日がある場合、初診日までの年金保険料の納付状況によって、障害年金が請求できない場合があるためです。具体的には、初診日の前々月から前の直近の1年に未納がない場合、または前々月までの全加入期間の2/3以上の保険料の納付・免除が必要です。初診日以降に保険料を納めてもだめで、受診する前に支払いや免除申請をしておかなくてはなりません。20歳になったばかりの時が特に引っかかりやすく、すぐに納付や免除申請をしておくことが大切です。
《質問》 診断名がLD、AD/HD、広汎性発達障害などその時によって違う名前になっています。このような場合は、いつが初診日になるのでしょうか?
《回答》 まず、請求時点で先天性(原因不明)の知的障害を伴っていると診断されている場合は、発病日、初診日とも出生日となり、初診日の証明は必要ありません。知的障害の場合は、医療機関にかからずに、心理検査の結果で療育手帳を取得していることが多いためです。ただし、精神の診断書を提出する必要がありますので、年金の診断書を記載してもらえる医療機関を探して受診する必要があります。
ただ、全く特別支援教育を受けることなく、一般で厚生年金加入後に仕事のストレスなどで二次障害となり軽度の知的障害がわかったような場合は、厚生年金加入中の初診日が認められることもあります。
障害年金を請求する時点で知的障害を伴っていないと診断されている場合は、発病は出生日であっても、初診日は、傷病を自覚して初めて精神科や心療内科を受診した日となることが多いです。
単なる診断名の変更であれば、(精神科では診断名が変わることも珍しくありません)同じ病気とみなされて、一番古い精神科や心療内科の受診が初診日となることが多いです。発達障害が原因で、二次障害としてうつ病や双極性障害を発症した場合も同じ傷病とみなされることが多いです。